マケラさん、それって反則ですよね?
指揮者の就職は椅子取りゲーム
千秋:
なんだ? この過密スケジュール・・・・・・
エリーゼ(マネージャー):
アメリカで客演の大売り出しツアーよ。
今は来ている仕事をありがたくこなしまくることが、あなたのキャリアアップのためには、一番いいはずよ!マンガ版『のだめカンタービレ(#24)』より
のだめこと、ピアニストの野田恵が世界への道を歩み始めて、恋人であり指揮者である千秋真一は焦りを感じるばかり。財政難にあえぐマルレ・オケの常任に甘んじることなく、更なる高みを目指したくても、道はなかなか開けない・・・・・・。
そうなんです。どこででも演奏会を開けるピアニストと違って、オーケストラの数は限られています。経験を積みたくとも、なかなか思うようにはいかない現実の中、一歩一歩着実に経験と実績、そして信頼を得てこそ、世界の一流オケを振れるようになる。
ましてや、そんな一流オケの音楽監督や常任指揮者になど、簡単になれるはずもありません。たとえ席が空いたとしても、候補者リストには、何十人もの名前が書かれていたりするそうな・・・・・・。指揮者の就職事情は、まさに椅子取りゲームなのです。
クラウス・マケラの登場
そんな指揮者の世界で、反則級の就職活動を展開したのが、今人気絶好調の若手、クラウス・マケラ(Klaus Mäkelä)です。いやまあ、反則と思っているのは、同業の人たちであって、本人に何か非があるわけではありませんが。

クラウス・マケラは、1996年1月17日生まれで、現在29歳。フィンランドの首都ヘルシンキの出身で、シベリウス音楽院でチェロと指揮を学びました。2020年、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任。さらには同年、ヨーロッパの主要オケの一つ、パリ管弦楽団の音楽監督の地位を手に入れます(21年就任)。
国際指揮者コンクール優勝の肩書を引っ提げてというわけでもなく、まるで飛び級するが如くの勢いです。もちろん、本人に実力があってこその話ではありますが、やはり大きかったのはヨルマ・パヌラ(指揮者育成の巨匠として著名)に師事したことでした。パヌラの教えを受けた俊英ともなれば、それだけで一流への道が開けたも同然だったのです。
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
クラウス・マケラ指揮
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団(2019年1月4日)
マケラ、さらに躍進する!
録音面では、2022年にDeccaと専属契約を締結。同年、オスロ・フィルと組んで、シベリウスの交響曲全集をデビュー盤としてリリースしますが、これが現代的な新しいシベリウス解釈を提示したとして、評論家筋からも高評価を受けます。
スコアの精緻な分析力をベースにしつつ、若さ溢れるエネルギッシュな指揮で、オーケストラから鮮やかでダイナミックな響きを引き出すのが、マケラのスタイル。チェロ奏者という強みを活かして、弦楽セクションの調和も見事。しかも、指揮台での立ち姿が映えるとあっては、人気が出ない方が不思議ですね。
さてそんな中、2022年6月、オランダのコンセルトヘボウ管弦楽団がマケラの首席指揮者就任を発表します。これだけでも、凄いことですが、本当の驚きはさらにその先にありました。
2024年4月、今度はアメリカのシカゴ交響楽団が第11代の音楽監督として、マケラを迎えると発表したのです。就任はどちらも2027年から。世界のメジャー・オーケストラの主要ポストを、両大陸で同時に担うのです。これこそ反則級の就職活動と言わずして、何と言えば良いのでしょうか?


